二、天然剣士

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稽古などに使うと言われた道場には、人の気配など無いほど静かだった。 「稽古をするのは昼間の中だから、今のところ使うのは僕らだけなんだ」 そう言うと彼はいつの間にか持って来た木刀を私に渡し、試合するための距離をとった。 姿勢が整うと、私は息を吸った。 「それでは…参ります!」 そう言って勢い良く走り、彼の木刀にぶつからせる。 何度か木刀がぶつかり合い、彼と私は―――微笑む 「へぇ…薩摩を斬っちゃうくらいだから…強いね。君」 「私にとって…剣術は愉しんでやってましたから!!」 「へぇ…なるほど―――ね」 「!!」 油断していたのか、気が付くと木刀は後ろに来て居て、私は慌てて距離を離す。 「さ…さすが新選組の人です!なかなか読み取れません!」 「……にしては明るいね」 「だから――」 微笑みながら私は走り、彼の背中に木刀を向ける。 「剣術が好きだったんです。本当に人を殺さなければ」 「!」 そう言って木刀を下ろそうとした時―――― 「そこまでだ総司!!」 「「!!」」 良く響く道場の扉側を見ると、沢山の人々が私達を見ていた。 「え…いつの間に……?」 私がサーっと青ざめていると、彼は「あーあ」と言って溜め息をついた。 「もうちょっとで決着がついたのに…鬼の副長さんが止めちゃった」 「そりゃ止めるだろ!昨夜連れて来たガキと総司が戦ったら怪我するだろ!!」 「見ての通り、二人共怪我なんて無いよ」 「そうゆう意味じゃなくてな―――」 鬼の副長と言った彼とぎゃあぎゃあしていると、「まぁまぁ…」と赤髪の人が会話を止めた。 鬼の副長と言った彼とぎゃあぎゃあしていると、「まぁまぁ…」と赤髪の人が会話を止めた。 「見てたら結構強かったじゃねえか、総司相手にこんなに戦うのは斎藤以来じゃねえか?」 そう言って私を見ると、視線が強すぎて私は真っ赤になってしまう。 「まぁ…たしかに土方さんの許可無しで女と挑むのも…少し否定するが」 「……すいません」 「いやいや!!君が謝ることないから!総司が悪いんだもんな」 私と同い年くらいの人はそう言って彼を睨んでいた。 「……」 彼はなんだかつまらそうな顔をして、私の方を見た。 「でも調度良いんじゃないの?皆集まったみたいだし」 「え?」 「そこに居る鬼の副長さんがね。昨夜の事を聞かせてほしいんだってさ」 「……」
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