彩乃、四月

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部活動の終了時刻になり、私はスケッチブックを閉じた。 荷物をまとめて美術室を出たところで文乃が待ち構えていて、私は驚き声をかける。 「文乃なんでいるのー!図書室にいるって言ってたじゃん!」 「行ったよ図書室。あのねっ?すごい面白い人がいてさ!」 「待ちきれなくて来ちゃった?」 「そう!」 大きく頷く文乃がすごくかわいくて私まで笑顔になる。 斉藤文乃と佐藤彩乃。出席番号が前後だった私達は、高校に入学したその日に友達になった。 そして日を重ねるうちに実感した。 私達は二人で一人なのだ。 文乃が好きな物は私も好きだし、私が好きになる物は文乃も好きになる。 一緒に買い物に行くと服や文具も同じ物を選んでしまい、毎回色違いで揃えた。 文乃はいつも私を大好きだと言って抱きしめてくれる。 そんな文乃がかわいくて嬉しくて私も文乃を抱きしめ返す。 私達は違う家に生まれ育ったけど、魂は双子なんだ。本気でそう思えるほど、私には文乃が大切な存在だった。 きっと文乃も。 私と同じ事を思っている。
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