文乃、五月

2/2
前へ
/34ページ
次へ
やっぱり私達は二人で一人なんだと思った。 私が好きになった滝君を、彩乃もすぐに大好きになってくれた。 昼休みや放課後に、図書室で滝君を観察するのが私達の日課になった。 今日の滝君は窓際のソファーに座り、午後の陽射しを浴びながら微動だにせず本に見入っている。 「ねえねえ、文乃」 「ん?」 「あれさ?滝君起きてるのかな?」 「え?目開いてるじゃん」 「いや、でも動いてなくない?全然ページ捲んないよ?」 「そういや……」 言いかけたところで滝君の首がカクンと背もたれに倒れた。 「!!!!」 やっぱ寝てるー!! かわいいよ!かわいいすぎるよ!あの人! 私と彩乃は静かな図書室で顔を見合せ必死で笑いをこらえる。 滝君と、どうにかして仲良くなれないかなぁ。 彩乃もきっと今そう思ってる。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加