思い出がない少年─東城貴哉

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 雲は寄せ付けようとしない一面の晴天で、清々しさを感じさせる空色がどこまでも広がっていた。 そろそろ昼の時間になる。 学校では授業が終わりに近づき、その屋上では早めに昼飯を済ませた生徒がいた。 その生徒は一見不良の名に相応しい格好をして、髪は狼のような髪型で、その爽快感溢れる空をただただ見つめている。 チャイムが学校中に鳴り響き、昼休みにさしかかった所に屋上の古い扉が開いた。 「いた。探したわよ貴哉」 その女子生徒は授業をサボった貴哉を探していたらしく、そしてようやく見つけたと言った感じだ。 すらりとした長身に長い髪を堂々と背中に流し、ガミガミとうるさく貴哉を説教する。
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