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あたしと別れてからは歩いていたようで、意外なほどあっさり氷神を見つける事が出来た。
真っ直ぐ大通りに出た彼は、市電の電停に仕事帰りのサラリーマンに混じって立っている。
あたしは、気付かれないように五人くらい間を空けて列に加わるが、何のことはない。氷神はずっとケータイをいじっていて、こちらに気付く様子はなかった。
間もなく、白地に緑色のラインが入った車両が滑り込んできた。
他の客と車内に雪崩れ込むと、入り口付近に座った氷神に対して、あたしは対角線上にあたる向かいの一番奥に陣取った。
『発車しまぁす。お気をつけください』
白けきった運転手のアナウンスと共に、あたし達を乗せた市電は動き出す。
幸い、市電の中は混んでいるので、目立つ動きをしなければ多分バレないだろう。
それに、あっちは相変わらずケータイに集中してるし。
ガタンゴトンと市電に揺られ、五つ程駅を乗り過ごした頃だった。氷神が腕を伸ばして降車ボタンをプッシュした。
『次、止まりまぁす』
いよいよ、目的地に着いたようだ。
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