鋏の少女

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 私がとある小学校に勤めていた時の話だ。  小学校教員となってから四度目の転勤先は郊外にあった。ほぼ中央部に位置する県庁所在地から西、少しずつ民家が疎らになり、幅員が減少しゆく道を一時間程度。四季に応じて茶と、緑と、黄金に色移ろわせる田んぼの隙間を縫うように進み、時折川を越えれば到着する。所謂「田舎」と呼ばれるに相応しい眺望を広げており、街中では遠くに見えた山脈がここからでは圧倒的な存在感を放って見せている。夏が訪れれば生命力の青を鬱蒼と茂らせ、秋が訪れれば広葉樹が寂寥の彩りを見せる山々の麓で、僅かに寄り添うような恰好をしながら老朽化がいかにも趣ある校舎はひっそりと建っていた。
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