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「そん、なこと、だって昨日だって楽しそうだったし、全然普通に…」
「お願いがあるの」
突然、凛とした声で真っ直ぐな目で俺に話しかける。
このとき、俺の動揺しきった意識の中に、これから咲花が話す事が、棘のように刺さったんだ。
「同じ病室にいた友達が前…亡くなったときから…その子の死に顔が頭からはなれないの。さきは、その顔をみんなに見せたくない。とくに笑美と優衣には…恥ずかしいけど、高校生にもなってはじめて出来た学校友達なの。同じような病気ですぐ死んじゃうような友達とは違うの。絶対に見せたくない…二人の頭に残るのが死に顔なんて嫌なの…だから二人が咲花の葬儀になんて来て欲しくない。だから…」
ぐっと拳を握り締めてから彼女は言った。
「あたしは友達を守りたいから、みんなと友達やめる…」
咲花の顔は涙でぐしゃぐしゃになっている。
俺はなにもいえない。
それでも彼女は続けた。
「なんで…なんでそれを俺に言ったの?」
「…海翔くんは、優衣のためならなんでもするでしょ?」
「え?」
咲花は涙を拭きながら言った。
「海翔くんは優しい。だから協力してくれる、そうでしょ?…だって…優衣のこと大好きだもんね」
「は?」
何がいいたいのかさっぱりわからない。
「さきの死んだときの顔が優衣の頭にこびりついて…ボロボロ担ってく優衣なんか、みたくないでしょ?…だってほら、優衣のお父さん…」
そしてはっと気付く。
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