以心伝染

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電話が鳴っている。 「作業前は携帯をオフに」 昔やった日雇いバイトのお触れ書きを思い出しつつ、私は脚立を降りて、腰掛ける。 「もしもし?」 こんな夜更けにどんな非常識者だ。 「ああ、Y、さん」 一瞬、「Y」と呼ぼうとして敬称に落ち着く。 「ほんと、久しぶりだねえ」 どのくらい声を聞いてなかったかな? 「四年ぶり?」 記憶の細かさは相変わらずだ。 「元気だった?」 他人に電話する程度には元気に決まっている。 「私? まあまあかな」 最高でなければこう答えるに限る。 「ところで、どうしたの?」 手短かにお願いしたい。
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