鬼の影

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『鬼』とお義母様は仰いました。  私は――本当に不躾ながら――大旦那様が、お義母様の言おうとしている〝鬼〟なのかと悟ったので御座います。 「暫くして、その袋物屋はどうにも立ち行かなかくなってしまったことを知ったんだ」  お義母様の聞いた話によると、どうにも悪い病に憑かれたらしいということでした。  ふん、俺達を蔑ろにしやがったバチが当たったんだ。  大旦那様はそう息巻いておられたそうです。 「私も流石に気が咎めてね……少しだけ叱ったんだよ。いくらなんでもそれじゃ、私達が病を呼んだみたいじゃないかとね」  能面のような顔をされたようです。 「『確かに、俺が病を呼んだのかもしれねえ』って言ったのだよ。私は、あの人に詰め寄ったんだ」  呼んだって、どういうことだい? ねえ、お前さん!?  お義母様の必死な声が、ひきつった顔が、私の頭のなかにありありと浮かびました。 「あの人の生まれ故郷にはね、恐ろしい呪い(まじない)があったらしいのだよ」  自分の憤りを、怒りや欲望を川に流しそれを鬼が見付ける。鬼はその怒りを汲み取り、向けられた相手に良くない事を引き起こす。
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