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優しい優しい富一を見て、私は決意をしました。
影に角などあるわけがない。
この人がおとっつぁんが死ななければいけなくなった理由な訳がない。
お義母様は少し――ほんの少しだけ、私を驚かせようとなさっているのだと。
「少し……日に当たりましょう?」
「え? まあ、良いけれど……悲しいことがあったんじゃないのかい?」
それは、あなたの影を見れば分かります。
そう言いかけて、けれど言わずに微笑みました。
富一の手をとり、日の差す縁側まで歩きます。
あと少し。
後ほんの少し。
この角を曲がれば、広い庭を眺めることの出来る縁側に出ます。
富一の顔を見ました。困惑気味ですが、微笑みかけてくれました。
――大丈夫。私は、この人を、富一を信じる……!
私達をお天道様が照らすまで、あと――たった、たったの二歩というところです――。
――〈完〉――
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