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赤黒く細かな中華風の装飾が施された大きな門の前に彼は立っていた。
「やあ、待っていたよ待ちすぎて膝が笑ってる。
もうかれこれ1分位はここでずっと待ていたんじゃないかな」
そう言って笑うのは、肩まで伸ばした黒く脂ぎった髪を後ろで縛っている青年だった。
青年は、口元を指で掻きながらやってきた赤い帽子を被った人物に嬉しそうに手を振った。
「1分って、お前も今来たところじゃないか…」
「されど一分だよ、僕は君が待ち合わせに遅れてきた所為で、1分…60秒も無駄な時間を過ごしてしまったんだ。
1分あれば、僕は大好きな漫画を1P読むことが出来るし、カップラーメンだって半分ぐらい食べられる」
「わかった、悪かったよ…俺の方から呼び出しておいて遅れてきたのは悪いと思ってるさ」
赤い帽子を顔を覆うほど深くかぶった人物は、赤黒い門の前まで小走りでかけてくると青年に頭を下げた。
すると青年は少し困ったような顔をして「冗談だよ」と笑うのだった。
青年の名前は富原 景(とみわら けい)、つい最近就職先が決まったばかりの社会人なのだ。
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