業火の人影

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赤い帽子の男は、深川 直人(ふかわ なおと)景の友人であり、昔からの付き合いで景と同じ会社に勤めているよき同僚でもある。 今日は、その仕事でこの赤黒い門、本名[天罰門]にやってきたのだった。 二人は身長こそ景の方が高いが、お互い会社の制服であろう薄黒いスポーツスーツを身につけていた。 身体のラインが浮き出る服を綺麗に着こなしている二人の姿は、門に通りかかる人の殆どを振り向かせていた。 「さて、そろそろ行くか?あんまり時間もないしな」 景が背中にかけた赤いサブバックの位置を直しながら門を顎で示す。 「そうだな」 直人も景の提案に頷いて門を仰ぎ見る。 「今日の依頼はなんと言っても、あの[デンデン]だからな。 とうとうこの天エリア近くにも陸生魔巻貝が出るとはな」 「…直人、あまりその事はエリア内で口にしない方が良い。 誰に聞かれているかわからない時代だ、用心するに越したことはないよ」 [天罰門]の内側、二人が立っている所から後ろを見れば、そこは薄汚れた歪な住居で埋め尽くされているのがみえる。 全体的に灰色な、テントを繋ぎ合わせたような住居はここ数十年の間増え続けていた。 これらのテントに住む人間は、決して移民や放浪民ではなくれっきとしたこの天エリアの町の人々なのだ。
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