業火の人影

9/10
前へ
/10ページ
次へ
黄色い地面以外なにもない、見渡す限りの平原を景は、悲しそうに見つめてから尚人に向き直った。 「だな…っと、この辺の地質はもうかなり変質してきてる。 もしかすると一匹じゃないかもだ」 直人がスポーツスーツの右下ポケットから銀色をした長方形型の温度計を取り出して空にかざしてスイッチを押した。 暫くスイッチを押し続けていると、温度計が振動して液晶画面に温度がデジタルで表示される。 「…24,12度、別に問題にする事もない普通の暖かさだ。 [デンデン]投棄には全く支障は出ないだろう」 投棄とはこの場合、有害物質などを捨てることではなく別の意味を持っている。 本来、ゴミ処理関係に使われることが多いこの言葉が如何にも生物じみた名前の存在に対して使われるのには理由があった。 それは、[デンデン]=正式名称、アメジリアオオツノマイマイという生物が投棄に相応しいものだからだ。 核弾頭の影響は生物の構造にも影響を与え、一部の生物の遺伝子伝達物質DNAを変化させてしまった。 だがその変化は生物本来のものであり、放射線は間接的に彼らの遺伝子を組み換えたのだ。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加