変わらぬ日常

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「さって、とっとと食うか」 教室へ戻ってきた俺は買ってきたパンを自分の机に広げて座る。 紫音も自分の席から椅子を持ってきて俺の机の前に座る。 「私もっと。はい、ジュース」 俺の前にジュースを置くと紫音も机に広げられたパンを手に取る。 「チョコメロンパイの他にテキト~に取っていいの?」 「あぁ、適当に好きなの取ってくれ」 チョコメロンパイの他にどのパンにしたらいいか迷ってた紫音に俺はそう答えた。 「んじゃ、テキト~に貰うね。とりあえず、チョコメロンパイから食べよっと」 「てか、そんなパン今まであったのか?」 「うん、前からあるよ」 今まで見た事もなかったが、どうやら俺が知らなかっただけで前からあるものだったらしい。 「どんなパンだ?」 見た目はアップルパイにチョコをかけた感じ。 リンゴの代わりメロンでも使ってるのだろうか? 「メロンのパイだよっ」 まんまだった。 「ちょい食べてみる?」 「いや、いい…」 少しかじりついたチョコメロンパイを笑顔で俺に差し出す紫音。 ほんの少し興味はあったが俺は断った。 気軽に話して、こうして一緒に昼飯を食べるのはいいが、流石にこれは恥ずかしい…。 「そっ、めちゃ美味しいのに…」 残念そうにしながら再び紫音は食べ始めた。 俺も食べようと焼きそばパンに手をのばす。 ダダダダッ パンを取ろうとする寸前、凄い勢いで教室に慎司が飛び込んできた。 「俺をおいていくなよっ!!」 俺と紫音を見つけると、そう叫ぶ。 その手にはパンが入っているであろうビニール袋とジュースのパック。 「おぉ、生きてパン確保出来たのか」 「お、おかげ様でね…」 笑顔で親指を立てながら言う俺に対して、慎司はジト目で答える。 「まさか、親友に蹴り落とされるとは思わなかったけど」 「誰それ?」 「………」 俺のその言葉に一瞬、慎司が固まる。 「お、お前の事だよっ」 「ただのクラスメートじゃなかったっけ?」 「………」 俺の代わりに紫音の横やりが慎司に突き刺さり、慎司は無言のまま自分の席に戻っていった。 そして、一人寂しくモソモソとパンを食べ始める。 流石にこれは可哀想に思う俺だったが、紫音は平然とパンを食べてた。 紫音は慎司に何か恨みでもあるんだろうか…。
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