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だから、出来ることならば連れて行って貰いたい。影夜のいるその場所まで。だが、今度は許されないだろう。そんな予感がした。常社神社の時は、そのせいでとんでもない事になってしまったし。
「彩弓は、影夜の事を誰よりも知っているんだよね」
月が彩弓の気持ちを読み取ったかのように、そう訊ねた。彩弓は驚きつつ頷いた。自分が相手の気持ちを読み取る事はよくあっても、その逆をされた事は殆ど無かった。
「彩弓は優しいね」
フッと微笑んだかと思うと、ふわっとした感触が彩弓を包み込んだ。肩に回された腕、そこから伝わる温かい感触、肌をくすぐる髪から漂う仄かな香り。彩弓はゆっくりと目を閉じた。
「あの人は寂しいんだと思う。だから、お姉ちゃん。あの人を殺さないで」
あえて、そのはっきりとした言葉が浮かんだのは、何故か分かっている。影夜は、月にとっても許しがたい人であるからだ。それが分かっているからこそ、分かっていてなお、止めようと思う。
「大丈夫。私は……私達は、彼を救う。彼が囚われている闇から」
彩弓はしっかりと目を閉じて、願う。皆で無事に帰って来られるように、と。
「さぁ、行こう」
月の言葉に、彩弓はしっかりと頷いた。
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