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「違う。私が、私が心配なのは、一人になること」
え? と、それはどういう事かと問うように驚く一真の目の前で――月は身体を貫かれて倒れる。
「――?」
現実に思考が追いつかなかった。月の腕が、一真の身体にもたれ掛るようにしがみ付き、だが適わず、地面に倒れる。漆黒に輝く髪が顔を打ちながら舞い落ちた。
「私達に、いき場なんてない」
闇の中で光を放ちぼうっと浮かび上がる白の髪。亡霊の叫びに揺らめかせながら彼女は近づく。
「だから、ここで終わらせるの。陰陽少女の、のろいを」
その瞳は闇よりも濃く、故にはっきりと存在を示した。
「ふっふふ、あはははははははははははははははは――」
少女の血に濡れた異形の太刀を愛おしげに見つめ、沙夜は嗤う。
この世の闇を、それに抗う者達を。
「あ……」
床に倒れた少女の骸はもう動かない。そして、今度こそ。
一真の内から闇が吹き出した。
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