第六章 少女は夢の中にて光りて

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 躱せた事に、一真は驚き、ぽかんとその白い手が引っ込むまで眺める。 「呆けるな、阿呆!!」  天が叫び、一真はハッと、右へと転がるようにして逃げた。背後から伸びたのもまた、真っ白な手。そして、あの贄の少女だった。  日向がさっとそちらの方に向けて、焔の扇を振るう。少女は右の手で右に弧を、左の手で左に弧を描いた。それは上から始まり、下で一つの円と成って、白く光り輝いた。  金属同士がぶつかり合う甲高い音が響き、日向が少しばかり感心したように笑う。 「成程、贄になるだけあって、並じゃないね」  再び、少女が消える。 ――また、下だ  体を起こし、再び下がる。半秒後、少女の手が宙で見えない首を掴むように泳ぐ。  しばし、ぽかんと口を開けていた一真はハッと息を呑む。 「て……なんで、俺は避けられたんだ?」 「馬鹿、修行したのも忘れたか? そろそろボケが始まってんじゃねぇのか」  天に馬鹿にボケと言われて、流石にムッとする一真。だが、驚きだった。あの修行では一度も成果が出ていないというのに。 ――右  押し込むような殺気に、一真は反射的に後ろへと下がり、同時に剣を振り上げた。先程と同じ円を描いた光を掌上に展開しながら、少女の姿が暗闇に浮き上がる。が、その手の肘から先を刃が捉え、一閃。 「嫌ぁあっ」  あっと思う間もなかった。気が付いた時には、少女は悲鳴を上げもう一方の手で肘を抱えたまま、蹲る。自分を見るその目が酷く怯えており、一真は思わず狼狽する。 「一真、彼女は既に死んでいるんだ」  天の声に、一真は機械的に答える。少女の姿は早くも消え去ろうとしていた。やるならば、今だ。 「分かっている」 「今、ここで滅しなければ、彼女は永遠と苦しみ続ける事になる!」
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