第六章 少女は夢の中にて光りて

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「どうして、ころす、の?」  少女の声が苦痛に満ちる。痛みこそが物の怪の力。ここで捨て置けば、再び彼女は復活する。 「一真!!」  一真には見つけられない。終わってしまった彼女を救う道は。 「どう、し――」 「あぁああああああああ――――!!」  金色の刃が躯に吸い込まれ、そして少女は解放された。  がくっと膝の力が抜けて、一真は――今日何度目になるのか分からない――地面に座り込んだ。引き抜いた破敵之剣は、懐剣の姿へと戻っている。息も絶え絶えになる彼の目の前で、白と金の光の鱗粉が宙を舞い、元来た穴の方へと消えていく。  やった。この手で。この手が彼女を再び、地の底へと落としたのだ。その事実が分かった途端、身体の震えが震えが止まらなくなる。 「大丈夫だよ、一真君」  ふわっと、日向が座り込む一真の背後から、その体を包む。 「あれは、何だったんだ」 「多分、ここはね元は儀式場だったんだと思うよ。さっきの女の子は贄だったんだ」  そこまで聞けば、何となく一真にも理解は出来た。かなり偏りはあるが、その手の話の知識は多少ながら知っている。  人は、自分の力ではどうしようも無い事が起きた時、神に祈る。飢饉、流行病、天変地異のあらゆることを神に解決して貰おうとする。その為に、自分達の一番大切な者を贄と捧げる……。それだけ追い詰められていた……という事の現れなのか。  だが、捧げる者はどこかでこうも思ったのではないか。 「たかが、小娘一人の犠牲で済むのならば」と。だが、彼らにとっては一人「だけ」の犠牲でも、少女にとっては一度「しか」ない命だ。そして、少女を想っていた者にとっても……。 「ふん、恐らくは沙夜がいた頃の時代じゃないかな?」
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