Presage

3/4
前へ
/7ページ
次へ
 一般的な中流家庭に産まれ、特に頭がよかったわけでもなければ、悪かったわけでもない。普通に進級、進学して、無難に周りと同じように就職した。友達が少ないとも思ってないし、彼女がいたことも何度かある。  至って普通な人生だ。まさに平凡。それに不満なんてないし、このままが一番だと思う。 「にあ」 「……ん? あぁ、わりぃわりぃ。手止まってたか」  ――でも。  「にあにあ」なんて不思議な鳴き声ですりすりと手にすり寄る毛玉を、また優しく撫でる。ゴロゴロと気持ち良さそうに喉が鳴るその可愛らしい姿に、わけもなく自然にくすりと笑う。  ――今、過去(うしろ)を振り返ったとしたら 「お前は気楽でいいなぁ」 「にあっ」 「あ? なんだお前、自慢か~?」 「にあ」  ――俺には何が残るのだろうか。  ゆっくりと、しかし確実に進む時の中。俺はごく平凡に日々を過ごしながら、その平凡に疑問を投げかける。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加