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ピリリ。ピリリ。
簡素な着信音と共にブブブとバイブが震えた。
おおかた上司からの呼び出しだろう。
「……っ! にあっ!」
「いっ……!?」
ぴくりと耳を反応させたと思った途端、今までの懐き加減が嘘のように俺の手に小さなひっかき傷をつけ、赤茶色の毛玉は一気に走り去ってしまった。
呆然とその先を見つめる俺の手元には、ブブブと着信を知らせる携帯。
「はぁ。……――はい、丹羽です。――はい。はい、今から戻ります」
……――――この数日後、俺の平凡人生に終止符が打たれた。
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