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「それにしても、あのキリク学園長がカイト君が言ったような事をしただなんて俄に信じ難いのだが……。それとキリク学園長はガサツでは無いと思うぞ?」
「誰もキリクとは言ってないし、奴は誰がなんと言おうがガサツだ。なんなら今から確かめに行くか?」
「本当か!?」
この会話を交わしていたのがちょうど裏口にたどり着いた時だった。ここに来るまでネイラ会長は何人もの生徒達に挨拶をされ、皆恨めしそうに俺のことを睨み付けてきた。今だって物陰から何人かがこちらの様子を見ている。
つまりネイラ会長は高嶺の花で、自然に話しあっている俺が羨ましいのだと言うことか。ということは、だ。今の俺ってかなり目立ってるのではないだろうか。
今更ながらそのことに気がついた俺は、すぐにでも逃げ出したい衝動に駆られた。全身から冷や汗が噴き出してくるのを感じながら、さっき提案したことを撤回しようとする。
「あーっと……。先ほど言った事なんだけどさ。悪いけどやっぱりやめに……。」
「学園長の部屋にはこの私でも片手で数えるくらいしか行ったことがないからな!今から楽しみだ!」
忘れてた……。奴は学園にある自分の部屋には生徒の立ち入りを禁止していたんだった。それに、期待で目を輝かせているネイラ会長に対して前言撤回することは到底出来なかった。
「賽は投げられた、か……。」
「む、何か言ったか?」
「いや、何でもねぇ。」
そうか?と首を傾げるネイラ会長。その瞬間、周りから何かが噴き出したような音が聞こえたが俺は知らない。
もうこの人とは一緒に歩きたくない……。校舎に入ってからも周りからは好奇な目から憎悪に満ちた目まで、様々な視線にさらされた。ネイラ会長はこのような状況には慣れているようで涼しげな表情をしていたが、時計で時間を確かめた途端顔をしかめる。
「あまり時間が無い。走るぞ、カイト君。」
そう言うなりガシッと俺の手を掴むと、いきなり走り出した。美人な生徒会長に手を引かれて走る、というシチュエーションが出来上がってしまった。
もう一度言う。生徒会長は誰もが認める美人なのだ。
そんな人に手をつなぐようなことになったのだから当然、周りの目は憎悪一色に染まった。
もう嫌だよこの人……。絶対わざとやってるでしょ。只でさえ目立つことが嫌いな俺にこの仕打ちって……。
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