二章

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 そして『学園長室』というプレートの貼られた扉まで来た。するとネイラ会長はふと俺に疑問を投げかけてきた。 「さて、ここまで来たは良いものの本当に学園長は中に入れてくれるのか?」 「今更だな、おい。」 「うむ。あの時は少々興奮していたからな。」 「何だそりゃ……。まぁ取り敢えず【ミラージュミスト】」  俺が唱えた瞬間、ネイラ会長を包み込む様に霧が発生する。 「キャッ!カ、カイト君この魔法は一体……?」 「【ミラージュミスト】光の屈折を利用した水属性の上級幻影系魔法の一つだ。」 「カイト君……君って一体……?」 「2―Sクラスの根暗だ。」  そういう事では無くてだな、という声は聞こえてきたがネイラ会長はすっかり周りの風景の中に溶け込んでしまっている為、俺一人しか居ないように見える。  我ながら完璧な出来だ。術者である俺でさえどこに居るか分かり辛い。尤も、分かり辛いというだけだがな。 「そんじゃ、今から学園長の部屋に入りたいと思うので絶対に声を出すなよ?」  コクコク、とネイラ会長は首を縦に振った……ような気がした。  俺はまず手始めに扉を二回ノックすると、中からキリクの声がした。 「すみません、現在どうしても手を空けられない事態に陥っているので日を改めて来て下さい。」  声が聞こえた途端、全身に強烈な寒気が襲ってきた。『あの』キリクが丁寧な物言いだと……!  鳥肌を立てながらも返事を返す。 「あんたの口調はそんなんじゃ無いだろ、この酒乱。」 「なんだカイトかよ。丁度良かった!午後の授業全部すっぽかして良いからちょっと此方を手伝え!」  俺だと分かったかと思うと急に態度が豹変した。ほらな、とネイラ会長が居ると思われる所へジェスチャーするが何も反応が無い。  どうやら驚愕のあまり固まってしまったようだ。
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