二章

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「おーい、カイト?早くこっちに来い。」 「へいへい、今から行きますよ。」  キリクに催促された俺はのろのろと学園長室の扉を開け、ネイラ会長が脇を通り抜けたことを気配で確認してから静かに扉を閉める。  学園長室には沢山の本で埋められた背の高い本棚が扉のすぐ横に並べられ、反対側の壁には賞状やらトロフィーやらがところ狭しと飾ってあるショーケースがいくつか並んでいる。  そして、それらに囲まれるようにして設置されている学園長の机と書類の収納スペース。全体を落ち着いた色合いでまとめられた上品かつ歴史をこの部屋はとても居心地が良い。  現在、学園長の机には青く長い髪を後ろでひとつ結びにしたキリクが占領している。机の上は大量の書類で埋め尽くされ、どうやらキリクはこの書類の山と格闘しているようだ。  俺が入ってきたことを確認したキリクは疲労からか、顔を歪めてぎこちなく笑いながら話しかけてくる。 「いやぁ~丁度良い時に来てくれたなぁ、カイトォ。ちょっと『これ』を消化してくれないか?いや、今すぐにでも私の手伝いをしやがれ!」 「むちゃくちゃなこと言うなよ。それに『これ』とは一体なんだ?」 「覚えているだろ?昨日ギルドを水没させちまったから依頼書の大半がグシャグシャになったんだよ。」 「それを全部書き直せと?それは大変なことで。」 「だからこそ、カイトに押し付……手伝ってもらいたい!」  本音が漏れてるぞ、おい。ネイラ会長はというと驚きのあまりか、はたまた見つからないようにしているかどっちかは知らないが本当に居るのかどうか分らない位に静かにしていた。  俺は盛大に溜め息を吐きながら言い返す。 「自業自得だ。」 「そこを何とか!」 「……ったく仕方ないな。ほら、一枚こっちに寄越せ。」 「よっしゃぁ!!流石カイトだ!」  俺は渋々了承した『振り』をし、キリクが嬉々として渡してくる依頼書の一つを受け取る。  一つの依頼につき依頼書は二つ作られる。一つは受け付け側が保管するもので、もう一つは受注者が保有するものだ。今回は受注者が保有する方が濡れて駄目になってしまった為、奇跡的に無傷だった受け付け側が保管する方を見て依頼書を書き直すこととなった。
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