二章

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 こんな面倒くさいことをこの俺が快く引き受けるとでも思ってるのか、キリクは?今にも小躍りしそうなほど舞い上がっているようだが、ここは一つネタばらしと行きますか。 「ギルドの依頼書の書き直し、ねぇ……。ほれ。」 「は?」  キリクが疑問に思うのも無理は無い。なにせ俺は何も無い空間に向かってギルドの依頼書を『手渡して』いるのだから。 「おいカイト、何して…………!」  キリクが言いかけたと思ったら急に表情が凍りついた。視線の先には何も無かったはずの場所から腕が現れギルドの依頼書を受け取っているという、なんとも奇妙な光景が広がっていた。  腕が依頼書を持った瞬間、【ミラージュミスト】は霧散して呆然と突っ立っているネイラ会長の姿が、そこにはあった。  キリクの方を見ると、彼女は尋常じゃない量の冷や汗をかいていた。 「……ネイラさんは何時から居たんだ?」 「…………最初から、です。」 「という事は全部見てたの?」 「……はい。まさか学園長がそんな性格だとは知りませんでした……。」 「ち、ちょっと待ってくれ!!これは誤解なん……!!」  キリクが言い終える前に無情にも昼休み終了のチャイムが学園中に響き渡った。  十分に茶番を楽しんだ俺は未だに少し呆けているネイラ会長を覚醒させ、学園長室の扉に手をかける。 「じゃあな、キリク。依頼書の写し頑張れよ。」  部屋を出て行こうとする俺に向かってキリクは 懇願してきた。 「ま、待てカイト!せめて私の手伝いをしてくれ!!」 「昨日俺はあんたに言ったよな?因果応報だ。自分で何とかしろ。」  両手両膝を地に付け項垂れているキリクを尻目に、俺とネイラ会長は学園長室を後にした。そのまま自分のクラスに戻ろうとしたがネイラ会長に話し掛けられる。 「カイト君、君は一体何者なんだい?」 「何度も言わせるな。俺はただの根暗だよ。」 「なるほど答えは変わらない、か。うむ、ならばカイト君。生徒会には興味あるかい?というか入ってはみないか?」 「……唐突過ぎるぞ。一応理由を聞こうか?」 「理由なら二つ程あるぞ。一つ目にカイト君は平然と上級魔法を唱えられていた。二つ目には、これは殆ど私情なのだが君には驚かされてばかりだ。それが楽しくて仕方無い。だから少しでも多くの時を共に過ごしたい。以上だ。」
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