二章

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「あら、カイト。丁度いいところに来たわね。」  まるで俺がギルドに来るタイミングに合わせたかのように、二階のギルドマスター室からティスが降りてくるところだった。 「丁度いいってどういうことだ?」 「あなたにやってもらいたい依頼があるのよ。内容は……。」 「いや、皆まで言わなくて良い。なんとなく察しがつく。」 「あらそう?じゃあ、これが依頼書になるから目を通しておきなさい。」  言われるがままに依頼書を受け取り、一応内容を確認する。 「やっぱり……。」 「予想通りだったかしら?」 「ああ、忌々しいほどにな。」  依頼書を見た途端、思わず大きな溜め息を吐いてしまった。ある程度予想はしていたものの、実際に目の当たりにすると依頼を破棄したくなる。  別に依頼を受託しなければいい話なのだが、ティスからお願いされたのでは断るに断れない。  そして依頼内容はこんな感じだ。 ――――――――――― 依頼 『ミスリード樹林』樹海エリアの調査 依頼者:自警団団長 内容  ミスリード樹林・雑木エリアにて、普段は樹海エリアに生息しているはずの原生生物が複数確認された。この事態で考えられることは樹海エリアでの何かしらの変化及び力関係に異常が現れたと推測。その原因を究明してもらいたい。 ―――――――――――  まあ要するにミスリード樹林の奥地で生態系が狂っているみたいだから調べて来いってことだな。  因みに自警団というのは犯罪を取り締まる役職だ。主に町の見回りなんかをしている。  そしてミスリード樹林とはイントラの北の関所を出て少し歩いた所に広がる森のこと。ここは大きく分けて二層のエリアに区分されていて人が手入れをした『雑木エリア』、さらにその奥に広がる『樹海エリア』。  樹海エリアは危険な原生生物が出てくるため、許可された者しか立ち入ることが許されない。  それに加えて樹海エリアは木がうっそうと生い茂っているから昼間でも薄暗く、方向感覚も狂わせるためよりいっそう危険度は増す。 「それで、受託はしてくれるのかしら?」  ティスが俺の顔を覗き込んで聞いてくる。
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