二章

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「受託はする。ただ、あまりやりたくねぇなぁ……。」 「あら、カイトならこれくらい簡単にこなせると思ったのだけど?」 「依頼内容は、な。」 「よく分らないけど……。とにかくその依頼、任せたわよ。」 「了解。」  ティスは受け付けに向かっていき、俺は二階にある更衣室へ行くために階段を上っていく。  二階には廊下を真っ直ぐ行った正面にギルドマスター室があり、廊下の正面から見て左側に男女の更衣室が隣接されている。  更衣室に入れば大きいロッカーが所狭しと立ち並んでいる。更衣室自体は広いのだが、如何せんロッカーが大きすぎるため部屋が狭く見えてしまう。  まぁ、鎧やら何やらを入れておく物なのだから大きくなってしまうのは仕方の無いことだが。  その中から自分のロッカーを開き、制服を中に掛けて着替え始める。 「これで手続き終了です。気を付けて行ってらっしゃいませ。」  受注カウンターで手続きを済ませ、後は現地へと赴くだけとなった。  因みに今の俺の格好は黒い長ズボンに柔らかい皮製の履き心地のいいブーツ、そしてフード付きで皮製の膝元まである深紅のロングコートを羽織っている。  どれも余裕を持たせて着ているため、あまり動きを邪魔しない。  背中には身の丈までは無いものの、垂直に立てれば首辺りまである大剣が鈍い光を放っていた。 (今回はミスリード樹林の樹海エリアか。あいつに乗って行くとするかな。)  そう思い牧場につながっている扉を開き、そこをくぐると風が吹きぬけ若葉の香りが鼻孔をくすぐる。  既に日は落ち始め、空はやや赤くなりだしていた。  そこからギルドの建物の壁沿いに歩いていくと隣接して飼育小屋が建てられている。飼育小屋からは絶えず様々な生き物たちの鳴き声が聞こえてくる。  すれ違った飼育員に軽く会釈し、ある一羽の元へと歩みを進める。  そいつは眠っていたようだが、俺が近づいてくることに気が付くと目を開き顔を上げてじっとこちらを見つめてくる。 「行くぞデリー。仕事だ。」  デリーと呼ばれた巨鳥は立ち上がり、俺に近づいてくる。  デリーとは原生生物の一つであるテリクスという巨鳥の種類にあたる。その体高は約二メートル半近くあり、強靭な足腰を兼ね備えているため陸路では移動手段として利用されている。    
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