二章

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 個体によってその容姿は少しずつ違い、デリーは全身を黒い羽毛に覆われていて黄色い嘴の下から胸にかけて白い羽毛が束になって生えている。  額には三方向に分かれた赤い線が走っており、目のすぐ上にも同じく赤い線が入っている。  俺はデリーを連れて飼育小屋へと向かう。   「ここで少し待ってろ。」  と言い残して飼育小屋に入った。  飼育小屋ではこの牧場で飼育されている動物たちの管理や鞍などの道具を貸し出しを行っている。  俺は『道具貸し出し』と書かれたプレートがあるカウンターに行く。 「テリクス用の鞍と轡、手綱を借りたいのだが。」 「あ、カイトさんですか。少々お待ち下さい。」  係員の男性はそう告げると、いそいそと奥の部屋に入っていった。  どうでもいい事だけどあの人はなんで俺のこと知っていたんだ?何年もここを利用しているがあの人は多分最近入ったばかりの新人だろう。名前知らないし今まで見たこと無いし。 「こちらがテリクス用の道具となります。」 「ありがとう。」 「それにしてもカイトさんのテリクスはいつ見てもカッコいいですね。餌をあげる時や掃除をしている時に見かけますがいつもそう思います。」 「そうか?気にしたことが無いから分らんが……。じゃあ、道具も借りたことだし立ち去らせてもらうよ。」 「ご利用ありがとうございました。」  鞍と轡と手綱を小脇に抱えて飼育小屋を出ると、地面に座って姿勢を低くしたデリーが待ち構えていた。  何度もやっていることだからこれから道具を取り付けることをちゃんと分っているようだ。頭に轡を取り付け、そこに手綱を結ぶ。背中に鞍を載せてから落ちないように固定させる。  それからフードを目深に被り、顔のほとんどを隠して出発の準備は整った。後は関所で『ミスリード樹林・樹海エリア侵入許可証』を発行して貰うだけとなった。  デリーに跨り、手綱を握る。 「北の関所に寄ってからミスリード樹林まで頼む。」  デリーに語りかけると、了承したかのように一声鳴いてから牧場の出入り口へと地面を蹴って行った。  城下町へ繰り出した俺はデリーの背中で揺らされながら、乗り物専用の道を疾走していた。  商店街を駆け抜け、7魔導学園の前を通り過ぎていく。学園の前を通り過ぎるときに何人かの生徒が俺のことを見つめていた、様な気がする。  
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