二章

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 ……勢いで学園の前を通り過ぎたけど大丈夫、だよな?  学園の前を通り過ぎてから真っ直ぐ行くと縦大通りに出る。そこから流れに沿って北の関所まで走っていく。  縦大通りは人や運搬用の動物達でごった返していた。一応歩行者用の道路と車道とで分かれてはいるが、今ぐらいの時間から夕飯の食材を買いに来る人たちが商店街へなだれ込んでくる。  そのため、王都の中心地とも言えるこの縦大通りは平日だろうが休日だろうが人や運搬用の動物達で溢れ返るのだ。  そうこうしている内に北の関所の門が見えてきた。今の時間から王都を出る人はあまり居ないらしく、門の近くはほとんど人の姿が見られなかった。  門のそばまで寄り、デリーを止めさせてその背中から飛び降りる。 「ここで待ってな。すぐに戻る。」  デリーにそう告げて俺は門を警備している自警団の元へと歩いてく。 「すまないが『ミスリード樹林・樹海エリア進入許可証』を発行してくれないか?」  俺は依頼書を見せながら自警団の男に話しかけた。男は依頼書をじっくり見てから口を開いた。 「…………かしこまりました。今から発行しますので少々お待ち下さい。」  男は少しうろたえながらも、門の脇にある扉の中へと入っていった。  まあ、驚くのも無理は無いか。最近何かと噂となっているミスリード樹林に依頼をこなしに行くのだ。  その上あと一、二時間の内に日が落ちてしまうような時間に樹海エリアへと向かうのだからなおさらだ。  しばらくすると一枚の書類を手に、男が扉から出てこちらに向かってきた。 「こちらが許可証となります。お気を付けて行って下さい。」 「ありがとう。行くぞデリー。」  許可証を受け取りながらデリーを呼び寄せ、もう一度背中に乗り込む。手綱を握り締めるとデリーは歩き出し、やがてスピードを上げて走っていく。 「あの人、声からして結構若そうだと思ったけど……大丈夫かな?」  自警団の男は夕日で赤くなった道をテリクスに乗って遠ざかっていく少年の背中を見つめながら呟いていた。
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