二章

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 そこには一頭の怒り狂った暴嵐豹と対峙する六人の学生の姿があった。  ……いや、彼らがどこの誰なのかは分かってはいるのだけどね。いざこうして目の当たりにすると頭痛がひどいの何の。  どうしてこんな状況に陥ってしまったのかは定かではないが、取り敢えずだいぶ苦戦しているようだし助けるとしますか。非常に不本意ではあるが。 「はぁ、本当に面倒くさいことしやがって。」  俺は溜め息を吐きつつ、睨み合う彼らの間に割り込んで入っていった。 ――――――――――  時は遡り、四時間目終了のチャイムが学園全体に響き渡っていた。 「よぉうし!!授業終わりだ!委員長、号令頼む!」  イザナギ先生に催促された僕は起立、礼と決まりきった号令を掛ける。  イザナギ先生はクラスメイト全員が僕の号令に従ったことを見届けたかと思うと、脱兎のごとく走り去っていき僕らの目の前から忽然と姿を消した。  そ、そんなに昼休みを待ち焦がれていたんだ、イザナギ先生。彼のキャラがよく分からなくなった瞬間だった。  一人呆気にとられていたが、いつもの五人がこちらに向かってくることに気付いてすぐに鞄から弁当を取り出す。 「準備できたか、スオウ?」 「大丈夫だよレムス。それじゃあ皆で食堂に行こうか。」 「今日こそは戦場からパンを奪取するぜ!!」  僕らは揃って教室を出て話し合いながら地下一階の食堂を目指して歩き始めた。  最初に話しかけてきたのはレムス、そして気合の入った声で高らかに宣言をしたのはヴァン。二人とも僕のかけがえの無い親友だ。  ヴァンの言う戦場とは購買のことで、そこで売られている手作りパンは絶品らしい。ヴァンはこのパン欲しさに一年からずっと続けてきているが一度も買えたことが無い。 「ヴァン君はいつまでたっても懲りないんだねぇ。ある意味尊敬しちゃうなぁ。」 「野蛮極まりないですわね。ここまできたらどうしようもありませんわ。」 「バカは同じことを繰り返すってのは本当のことみたいね。」  ヴァンに対して口々に辛らつな言葉をぶつけるのはアイ、マリア、エリスの女子三人組。いつも僕のそばに居て何かとヴァンに対して突っかかってくる。
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