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「……エ、イン?」
心臓の鼓動が早くなる。押しつぶされそうだ。
急いで駆けつけた部屋には、静かなリズムをつける機械と
アルベルトの目の前にベッド
そこには唯一の家族が、『エイン』が、酸素マスクを付け、横たわっていた。
「エイン、俺を……置いて行かないでよ」
ベッドの横にある椅子に腰を落とし、エイン顔に視線を落とす。
東洋人特有の黄色の肌ではなく、青白い。
ーーー 一体、何がお前を襲った。誰が……
首にかかったロザリオを外す。それをエインの左手に握らせ、自分の手をその上からそっと重ねた。
「……ア、ル?」
心電図の電子音だけが響いてた部屋に、ぐぐもった言葉が漏れる。
「エイン! 大丈夫か!?」
それがエインの声だとわかり、すぐさま立ち上がり、顔を覗く。
「……っアル、白、赤、黒の騎士を、知ろうとは、しないで、ね」
「なん、だよそれ……お前、死にそうな状況でっ。俺を一人に、しないで」
「大丈夫。……私の祝福が、アルを守ってくれるよ……?」
そう言い終えると部屋に響き渡る電子音が荒れ狂う。
不整脈のアラームが鳴り、荒ただしく医者たちが入り込み、ベッド横に居たアルベルトに「下がるように」と言う。
荒れた電子音と共に、大きく脈打つ、自身の心臓の音がシンフォニーを奏でる。
ーーー騎士?なんだよそれ
エインの祝福?俺を残して死ぬ気かよ。
キツく握った掌から血が垂れる。
部屋の隅でエインを見つめる瞳に熱は篭るが、涙は出てこなかった。
ーーーあぁ、エイン。お前の死でさえも俺は涙を流せないらしい。
荒ただしくなった部屋だが、アルベルトの耳には何の音も入らなかった。
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