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腕時計で時間を確認していると、ドアが開く音が聞こえ、顔を上げた。
「ボスの仕事は、そんなに忙しいものなのか?」
たった今、部屋に入ってきた人物。赤毛の青年に問いかける。
「っ! ……いいや、逆に、暇だよ。
久しぶり、クロムウェル」
声をかけられ驚いた表情を少し見せ、すぐに愛想の笑顔になる。
「あぁ、久しぶり、アルベルト。お前と最後に会ったのは、何年前の事だ?」
アルベルトの方に近づき、ハグをしてやる。
「エインがまだ、生きてる時だから……」
ギュッ と、背中に回させた手が、俺の背広を強く握り、後の言葉を濁らした。
アルベルトにとってエインは家族であり、世界の全てだった。
エインを亡くした此奴にとって、『エイン』は禁句なのだろう。
俯くアルベルトの頭にそっと手を置き、優しく撫でる。
軽く撫でると、赤色の髪の毛が指に絡みつく。
ーーー少しは大人になってるかと思ったら、まだまだ、子供だ。
そうだ、マフィアのボスだとは言え、まだこいつは……
ふと、此処に来る前に聞いた噂を思い出す。
『ボスは狂ってる』
「……アルベルト」
名前を呼んでやれば、俯いてた顔を上げ、此方の顔を不思議そうに見上げてくる。
「病気の方は大丈夫か?」
「……病気?」
回してた手をアルベルトの肩に置き、抱きついていた姿勢を正す。
「お前が通ってる病院、此処に来る前に寄ってきた。精神科に……
医者に聞いたら『統合失調症』に、『多重人格障害』だと」
「……」
「俺が戻ったのは、お前が心配だったからだ。……実績を積んでいようがお前はまだ、子供だ。
一年、二年、いや、お前の病気が治るまで、精神安定するまで俺が、このファミリーを守ってやる」
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