無駄に永く

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(あれは……ワシが学生の時) 老人は、遠い目をして天井を見上げた。 (所属した遺伝子工学の研究室で、教授が偶然に精製した薬……) 老人は、掌の上の白い粉を見つめる。 (それを口にした教授は赤ん坊になった……自らその効果を証明した教授だが、そうなることにより薬の精製方法は永遠に謎……しかし) 老人の口元を吊り上げニヤリと笑う。 (その時の残りを……ワシは密かに持ち帰っておったのだ) 老人は、ゆっくり上体を起こすと、枕元に用意したコップを手にする。 「当時、五十歳だった教授が乳飲み子になった……ゴホッ……な、ならば現在、七十歳のワシならば……二十歳の若者に……」 老人は、白い粉を口にして、すぐさまコップの水で流し込んだ。 「クッ……コホッ…………おおおっ!」 老人の身体を白い光が包んでゆく……。
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