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――――あぁ、アレね。
空いた手で頭を掻く里桜は、俺と目を合わせる気がないらしく、色んな所をキョロキョロとしていた。
「……多分イヤ、じゃなかった。」
「ホントか?」
「……特に嫌悪とか感じなかった。いきなりで、ビックリしたけどな。」
その時を思い出し、自問自答しながら俺は里桜に言っていく。
―――あれ?普通、嫌だよな、野郎にキスされるなんて……
キスされた瞬間と里桜に答えた言葉に引っ掛かった。以前にキスを強要された覚えがある。強引にされそうになって、俺は鳥肌がたった。
未遂で終わったが、未だにあの時のショックを思い出せば、鳥肌なんてすぐにたつ。
「……さて、拓海?」
「ん?」
「もうそろそろ教室に戻って店の売り上げを上げようぜ?」
悪戯っ子のような顔を見せた里桜は、俺から十分に離れていった。
その時、里桜の体温が離れていった時、心なしか“淋しい”と思ったのは何故だろう。
――小さな風が、俺の心を波立たせる。その波紋が、大きくなるのを自覚せずにはいられない。
「そうだな。もう、悪ノリすんなよ。」
「気を付けるわ。俺も殴られるのは嫌だしな。」
ハハッと笑う里桜には悪意はないと思うが、俺は深く反省した。
教室に戻れば、もう先程の客?達はいなくて新しい面子になっていた。
「あ、やーっと戻ってきた!」
入り口で中の様子を伺っていたら、教室の中央にいた遥に見つかった。
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