1.阿部と優眞

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「切られたって…で?」 如何にも予想外だと言わんばかりの台詞に、茶化すような色はない。 しかしそこは人柄が滲み出てしまうのか… 面白がっているとしか思えないくらい、ハキハキとした滑舌の良さで、阿部は尚も続ける。 「……え?それで終わり?えっ、お前、フォローなし?」 (第三者として楽しい、痴話喧嘩的な)続きが当然あるんだろ?隠すなよ。 …そんな顔で構えている阿部に、優真は不貞腐れる。 「フォローしたくてもできなかったの。 俺、ここ一ヶ月、満足に寝てすらいないんだぞ?」 「ぉまえ、それだって…電話の一本くらい入れられるだろ」 「………そーだけど」 けど、の後が続かない優真。 目が泳いでいる。 正論ではないが、言い訳ならあるらしい様子に、阿部は思わずニヤけながら、ソファーに深く座り直した。 縦に長い窓から僅かながらも残照が入り、部屋を一筋染めている。 その赤くなった空気に背を向けている優真の表情は、陰って阿部には見えなかった。
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