11人が本棚に入れています
本棚に追加
「切られたって…で?」
如何にも予想外だと言わんばかりの台詞に、茶化すような色はない。
しかしそこは人柄が滲み出てしまうのか…
面白がっているとしか思えないくらい、ハキハキとした滑舌の良さで、阿部は尚も続ける。
「……え?それで終わり?えっ、お前、フォローなし?」
(第三者として楽しい、痴話喧嘩的な)続きが当然あるんだろ?隠すなよ。
…そんな顔で構えている阿部に、優真は不貞腐れる。
「フォローしたくてもできなかったの。
俺、ここ一ヶ月、満足に寝てすらいないんだぞ?」
「ぉまえ、それだって…電話の一本くらい入れられるだろ」
「………そーだけど」
けど、の後が続かない優真。
目が泳いでいる。
正論ではないが、言い訳ならあるらしい様子に、阿部は思わずニヤけながら、ソファーに深く座り直した。
縦に長い窓から僅かながらも残照が入り、部屋を一筋染めている。
その赤くなった空気に背を向けている優真の表情は、陰って阿部には見えなかった。
最初のコメントを投稿しよう!