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「それは、どんな文脈なんだ」
声音が変わってしまったのは、積もり積もった我慢の山が雪崩始めた前兆にすぎない。
さすがの縁も、優真の異変に気付かない訳にはいかなかった。しかし対処法は思い付かないらしく、眉を下げてちょっと項垂れながら、ただ同じ言葉を呟く。
「…文脈」
感情が怒り方向に走り出してから可愛い(?)態度をとられても、優真は、その稚拙さに苛立ちが増すだけだった。
「お前、電話で何て言った」
「電話で」
「そう。言ってみろよ」
つい追い詰めてしまうのは欲求不満ゆえだろうか、だとしたらもう少し落ち着いて話すべきなのか、いや俺は悪くない。
心中の揺動は激しいけれど、それでも優真の表情はやはり固く、縁への詰問を止められない。
「あの…私たちの関係を、考え直そうって。言った」
「それ聞いたら普通は、別れたいのかなって思うだろ」
「…優真は、別れたいの?」
そういう話じゃないだろっ!
脳内で叫び倒しながら、冷淡な視線を縁に向けて優真は静かに言い放つ。
「今、そんな気分になってきた」
「優真は、別れたくなってきちゃったの…」
ため息が漏れたような微かな声で、儚げに寂しさを匂わす縁の様子に、刺々しい優真の精神は更にささくれ立つ。
「だからっ、お前が別れたいって言ってきたんだろ」
「えっ」
え、じゃねーよっ!
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