3.優眞と縁、噛み合わぬままに

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 ほら、と。  ごく自然な顔つきで入浴を促されるのが、優真には冗談としか思えない。 「いーじゃん」  口を尖らせながら、キスを続けようと顔を近づける。 「ダメだって」 「一回だけ」 「いやいや、ほら、清潔にしとかないと」 「キレイキレイ。シャワー浴びてきた」 「え、いつ」 「朝」 「1日経ってんじゃんっ」 「1日でそうは汚れないって」 「いや、場所が場所だし…てか、優真、私よりキレイ好きなクセになんでこーゆー時だけ」 「だってしたいもん」 「モンて」 「四の五の言わない、ほら、するよ」 「するよじゃないって、ちょっ、まっ」  縁の制止をものともせず、チューと聞こえてきそうな勢いでグイグイキスしてくる優真。 「いや、ほんとごめん、あの、…実は重大なお知らせがありまして」  説明口調になりながら、僅かに作った優真との隙間に膝を潜り込ませ、それをジャッキがわりに空間を広げて優真から逃れ、縁は改まって正座する。 「…何」  明らかに不機嫌な声で応じつつ、優真も不承不承ベッドの上に座り直す。 「…あの、ね。…私。妊娠3ヶ月なんです」 「…妊娠?」 「…うん」 「えっと、今? 縁のお腹に? いるの?」 「…うん」 「自己判断ではなく?」 「ちゃんと医師に診てもらってる」 「…経過は順調なわけ?」 「ん、今のところ問題なし。もうすぐ安定期」 「…一応、一度だけ確認する。冗談ではないんだよな?」 「うん」 「…そうか。え、っと。一人で大変だった…よな?お疲れさん。…ありがとな。…いや、でもさ」  慌てる姿をあまり晒さない優真の混乱状態が少し珍しく、縁はつい単純に鑑賞してしまっていた。  それに気がついて、優真の混乱は一直線に苛立ちへと滑っていく。 「おっ前っ、ソレ一番に言えよ。今頃ついでみたいに報告する内容じゃないだろっ」
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