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ほら、と。
ごく自然な顔つきで入浴を促されるのが、優真には冗談としか思えない。
「いーじゃん」
口を尖らせながら、キスを続けようと顔を近づける。
「ダメだって」
「一回だけ」
「いやいや、ほら、清潔にしとかないと」
「キレイキレイ。シャワー浴びてきた」
「え、いつ」
「朝」
「1日経ってんじゃんっ」
「1日でそうは汚れないって」
「いや、場所が場所だし…てか、優真、私よりキレイ好きなクセになんでこーゆー時だけ」
「だってしたいもん」
「モンて」
「四の五の言わない、ほら、するよ」
「するよじゃないって、ちょっ、まっ」
縁の制止をものともせず、チューと聞こえてきそうな勢いでグイグイキスしてくる優真。
「いや、ほんとごめん、あの、…実は重大なお知らせがありまして」
説明口調になりながら、僅かに作った優真との隙間に膝を潜り込ませ、それをジャッキがわりに空間を広げて優真から逃れ、縁は改まって正座する。
「…何」
明らかに不機嫌な声で応じつつ、優真も不承不承ベッドの上に座り直す。
「…あの、ね。…私。妊娠3ヶ月なんです」
「…妊娠?」
「…うん」
「えっと、今? 縁のお腹に? いるの?」
「…うん」
「自己判断ではなく?」
「ちゃんと医師に診てもらってる」
「…経過は順調なわけ?」
「ん、今のところ問題なし。もうすぐ安定期」
「…一応、一度だけ確認する。冗談ではないんだよな?」
「うん」
「…そうか。え、っと。一人で大変だった…よな?お疲れさん。…ありがとな。…いや、でもさ」
慌てる姿をあまり晒さない優真の混乱状態が少し珍しく、縁はつい単純に鑑賞してしまっていた。
それに気がついて、優真の混乱は一直線に苛立ちへと滑っていく。
「おっ前っ、ソレ一番に言えよ。今頃ついでみたいに報告する内容じゃないだろっ」
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