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ある日、キマは女王様の部屋に呼ばれました。
キマが女王様の部屋に行ってみると、女王様がいて、こう云いました。
「キマ。私は、この前お前にもらった花のお礼をしたいのだが、何か欲しいものはあるか?」
キマは考えました。
キマは、こうして宮殿で生活して、たくさんかわいがられてとても幸せだったので、これ以上望むものはなかったのです。
キマは、いいえ、と首を横にふりました。
女王様はこまったように笑って、云いました。
「服など、どうだ?」
キマは自分の格好を見下ろしました。
キマは、本当に小さい頃にお母さんに作ってもらった服をずっと着ていました。
作ってもらった頃は、真っ白だったキマの服は、着ては洗って、着ては洗ってを繰り返しているうちに、黄色くなってしまっていました。
でも、キマは、この服がとても気に入っていたので、また、いいえ、と首を横にふりました。
女王様はとうとう困って、キマに聞きました。
「キマは、何を望む?」
キマは考えて云いました。
「リーザさまのなみだがほしい。」
女王様は目をまるくしました。
キマは、自分のお母さんのように思っている女王様が、いっしょうけんめいつよくいるのを見るのがつらかったのです。
せめて、自分の前では、よわくてもいいよ、と。そう云いたかったのです。
けれど、女王様は、かなしそうに笑って云いました。
「私が泣いてしまったら、この国の、不安で泣いている民がもっと不安になってしまうだろう?だから、私は泣けないよ。すまないね。」
キマは、ぶんぶんと首をふりました。
キマはやっぱり女王様はやさしいと思いました。
「じゃあ、ぼくは、リーザさまがこのくにでいちばんうつくしいとおもうばしょにいきたいです。」
キマは考えた末に、そう云いました。
女王様は笑って、云いました。
「わかった。連れて行ってやる。」
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