お互いの日常

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帰りのスーパー。 この夕方の時間帯はタイムセールを狙った主婦が多い。 しかもこのスーパー、そのタイムセールが半端なく安い。 正直言うと、百合ちゃんをご飯に誘ったのもこの為だった。 言えば悲しむだろうから言わないけどね。 「よ、吉原先輩…凄い人だかりですよ…?」 「そっ、今ここは戦場なの。今から始まる戦争は激しいものになるわ。準備しといて」 「えぇっ!?せっ戦争ですか…?怖いですよぉー…」 危なっかしい言葉の羅列に恐れをなした百合ちゃん。 虎やライオンの檻の中に一匹兎が紛れ込んだ、とでも言えば良いかしら。 「タイムセールは5時半から。30分で終わるから出来るだけ多くの食材を入手すること。分かった?」 私の言葉に、小さく頷く百合ちゃん。 まぁ怪我されても困るから無茶はしなくて良いからね、と釘を刺しておいた。 現在5時15分。 タイムセールを狙った女豹達が続々と集まり始める。 そんな中、私達は前の方を陣取る事に成功した。 「こ、ここなら取りやすいですね」 「ええ。だけど油断は出来ないから、気は張っておいてね」 「は、はいっ…」 ぐっ、と小さく構える百合ちゃん。 頼りになりそうでならないような。 「5時23分…そろそろね」 スーパーの店長が巨大なカートを押してやってくる。 そのカートの中には大量の野菜とお肉。 とにかく一つでも多く獲る。 私達の戦いは今まさに始まろうとしていた。
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