お互いの日常

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車内での会話。 「あー、まじ萎えるわー」 「一緒にいる俺の気持ちも考えてくれよ頼むから」 「あー犬の気持ちなら分かるんだけどなー、猿の気持ちは分かんねぇなぁ、あー吊革になりてぇ」 「俺は今すぐありったけの力でお前を殴りてぇよ」 それはつい数分前の話。 少しでもお金を浮かせたかった彼は子供料金で切符を買い、改札口で駅員に止められ大人料金の倍額を支払うというサブイベントをこなしたのである。 その区間の金額、大人料金にして僅か120円区間であった。 そんないらないイベントをこなしつつ、電車に揺られながら駅につく。 駅から会場までは徒歩20分程度で、会場の名前は「吉原プロレスジム」という。 このドーム型をしたプロレスジム、選手専用ジムと約350人を収容できてしまう巨大な試合会場が隣接しており、良く大きな大会が開かれる。 大会当日はプロレスファンでジム一帯を覆い尽くし、熱気が凄まじい。 そしてこの日も例外ではない訳で。 駅には既に何十人か、プロレスファンであろう人達が目に留まる。 「燃える、燃ゆる心に火がつくぜ…!うぉおお!」 それを目にし、1人で猛る馬鹿。 突き刺さる一般の方々の視線。 あゝ、そんな目で見ないであげて下さい。彼は優しい良い子なんです。 「元気ですか!元気があれば何でもできる!行くぞッ!アラッシャァラ!!」 某有名プロレスラーのモノマネをし、大きく右手を掲げる阿呆。 まさか、と気付いた時には遅かった。 来る!と思い目を瞑る俺。 気持ちが空振った阿呆は、隣にいた知らない一般人を思い切り引っ叩いた。
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