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――彼女達は愛し合っている。
現に今も、二人は仲睦まじくベッドの上で愛を育んでいた。男は筋肉隆々で一族の中では、一番勇敢で民達には英雄と称えられ、賞賛されている。彼女はその村では一番の美人で、女神様の名が与えられた。
営みが一段落すると男は直ぐ様立ち上がり、茶色いコートを羽織って女に言う。
「少し、働きに出てくる」
「気をつけてね……」
名残惜しそうな目で女は言った。
彼女達が食事にありつくには、危険な場所まで働きにいかねばならない。毎回命のやり取りだ。生か死か。どちらに傾くかもわからない天秤。その死の淵を男は何度もくぐり抜けている。
「なぁに、心配するな。腹を空かした子供達が待っているんだ。生きて帰ってくるよ」
白い歯を見せ、笑顔でそう言った男は部屋を後にする。
一人残された女はすすり泣きながら呟いた。
「今日は何か嫌な予感がするの……。アナタ……悪魔に気をつけて……」
女の呟きが男に届く事はなかった。
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