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◇◆◇
その日。
入学式を終えてから2週間の経つ教室では、月曜の時間割に沿ってすでに授業が進められていた。
「……」
1年A組の窓際、最後部に座る津田千晶(つだ・ちあき)は、まだ微かな冷たさの残るそよ風に前髪を揺らしていた。
今は4時間目、数学の授業。
まだ中学時代のおさらいのような雰囲気だが、いつまでもそんな気分ではいさせてくれないらしい。
“明日からは新しい部分が始まるな……”
予習も復習も、彼は基本的に行わない。
かといって特別勉強が出来るかといわれれば、決してそんなことはなく、要はやる気の問題だった。
ふと視線を動かすと、隣の女子と目が合った。
ストレートな黒髪が美しい、とても綺麗な清楚系女子。
考えてみてほしい。そんな女子から、『変な人が見てる』という風に慌てて視線を外される光景を。
それが今まさに、千晶の受けた待遇だった。
「──……はぁ」
我ながら物分かりが良すぎるが、仕方がない。
この待遇は彼自身に原因があるのではないのだから。
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