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彼は得てして、特別な人間ではなかった。
学力、体力、精神力、いずれも並。
サラサラの髪の毛、整った目鼻立ちが彼を中性的に見せるが、女子と見間違われるほどではない。
そんな彼だがしかし、唯一最大の欠点として人付き合いが極度に苦手であることが挙げられた。
それなのにも関わらず『彼女』の態度ときたら……、
あそこまでずかずかと他人の領域に踏み込んでこられると、逆に拒否できなくなってしまう。
恐らく今日もまた、いつもと同じように、彼女は颯爽と現れるのだろう。
そしていつものように、こちらの都合など考えず、振り回してくるのだろう。
──……どうしたものだろうか。
千晶がそんな風にため息をついた直後、担当教師が授業の終了を告げた。
「それでは、今日の授業はここまでと────」
「千晶くんッ!!!!」
数学女教室の声を遮って、教室に鋭い声が響き渡った。
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