34人が本棚に入れています
本棚に追加
刹那、教室の中に強風が吹き荒れ、気が付けば────
「やぁ、千晶くん。偶然だな。迎えに来たぞ」
────千晶の目の前に、1人の女性が凛然と存在していた。
いつ目の前に現れたかもわからない、超人的な身体能力にまず驚く。
そして次に行われるのは、息を飲むという動きだ。
屹立と表現するに相応しいその立ち姿は、不遜で、尊大で、しかしそれらがまるで当然であるかのごとき超絶感を伴っていた。
厳然。
強大。
威圧。
その場に存在するだけで周囲を圧倒するその気配に、千晶もまた、数十回目の驚愕を心に受けた。
「さぁ、行こう千晶くん。今日も生徒会室で昼食を共にしよう。
今日のメニューは私が腕によりを掛けた。期待するがいい」
妙に演技ぶったその口ぶりだが、それに対する違和感など彼女にはまるでない。
彼女に言われるがまま、千晶は目の前に差し出された右手を取ると、
「ぅわっ!」
軽々とお姫様抱っこで抱き上げられてしまった。
恐ろしいまでに美人な彼女の顔を間近にし、千晶は自然と視線を逸らしてしまう。
その恥ずかしそうな様子に彼女は満足しながら、小さく頷いた。
「それでは、行こうか!」
瞬間、彼女と千晶の姿は教室内から消え去る。
が、2週間も毎日それを見せられている1年A組の面々は、もはや慣れのような感情を得てしまっていた。
最初のコメントを投稿しよう!