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バーが天高く持ち上がり、
人々が滑り落ちる砂のように歩き出す。
リーンリーンリーンリーン…
ファーン…
紫色の髪が風になびき、
足元に転がっていたビニール袋はバーの外へと
追い出されていく。
俺は初めてデジャブにあった様な気はしなかった。
むしろ久しぶりに近い感覚で、
感情の片隅で高揚の文字が存在感を成しているのが分かる。
…と、突如背後から聞き覚えのある声がした。
―また、死ぬのか―
至近距離へと近づく汽車に足は歩みを止め、
火花を散らす線路と車輪は擦れ合い、叫び声をあげる。
目の前で今この瞬間、
起きる死に誰もが目を覆った。
―また、死ぬのか―
耳から離れない。
またって何のことなんだ?
-もう、とっくに気が付いてるだろ-
身に憶えのない記憶が目の前に広がる。
馬車とよく似た乗り物が、
今まで見たことのない速さで駆け抜けていく。
馬は見当たらないが…。
見上げるととても高い柱で鉄のランプが赤と緑を繰り返している。
視線を戻すと随分滑稽な服を着ている少女がこちらに向かって来る黒い生き物を追いかけ、
無人馬車の中へと飛び出した。
―この世界の僕はもうすぐ死にます―
声の主と思わしき黒髪の少年が薄く笑みを浮かべて呟く。
-いつの時代も君は第三者-
コイツ、何をいっているんだ?
-よく目に焼き付けておくといい-
コイツは何なんだ?
何でそんなことを俺に言う?
-未来のコノハ君-
バァッン‼
直後、大きな追突音が響き渡る。
先程の少女かと思ったが…
そうではない。
少女は押し出された様に巨大な無人馬車の軌道から外れている。
はねられたのは別の少年だった。
しかし…何だ?この違和感。
初対面のはずなのに…
少年の服装、髪型、背丈。
全てが先程の謎の少年と同じ。
違うのは髪と目の色だけ。
-僕は彼のカゲロウだよ-
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