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レインが呪文を唱えると彼女のネックレスのサファイアが一瞬青い光を放ち、真っ暗だった視界が晴れる。この魔法は夜目がきくようになるというものなのだ。
息を殺してゆっくりとラヴァウルフ達に近付く。
そろそろいいだろ。
「レイン、ここから狙うぞ」
言いながら俺は2挺拳銃のうちの片方だけを抜いた。ダートファルコンと名付けられたこの銃のグリップには鷹が彫られている。
「わたし、いちばん左狙うね」
「じゃあ俺右な」
ダートファルコンを両手でしっかりと構える俺とサファイアを輝かせるレイン。
「撃てレイン!」
「“風の狙撃手(アネモス・スコペフティス)”!」
レインが魔法を放つと同時に俺も引き金を引いた。風の弾丸と鉛の弾丸はそれぞれ別のラヴァウルフの脚を撃ち抜いた。
銃声に気付いたラヴァウルフ達は一斉に駆け出す。もちろん、俺とレインに向かって。
「ビビって逃げると思ったんだけどな」
「仕方ないね。さっきの2匹を残してあとは皆倒しちゃおう」
戦闘開始だ。
俺はもう片方の銃を抜くとラヴァウルフ達に鉛弾の雨を浴びせる。レインも魔法で応戦し始めた。
連続する銃声と魔法を発動する音や閃光、そしてラヴァウルフの断末魔。夜中にこれだけやれば大迷惑だ。
案の定、近くの村人達が飛び起きて外にまで出てきてしまっている。 このままでは魔物の標的にされてしまう。ただ、それはこの場に俺達ウェザー兄妹がいなかったらの話だ。
要するに、ラヴァウルフ達が村人を認識する前に──。
「片を付ける!」
俺は疾走するラヴァウルフに銃を向けて撃つ、撃つ、撃つ。
数匹仕留めた。目の前にまで迫っていたラヴァウルフが飛びかかってくる。それはちょうど弾切れになった瞬間だった。
「ナメんなよっ!」
両手のダートファルコンをホルスターにしまい、俺は腰に手を回す。そこにあるのは2本のナイフ。ただのナイフではない。ククリナイフと呼ばれるくの字型に湾曲した大きなナイフだ。
ククリを手にとって、俺の眼前で牙を剥くラヴァウルフに真横から斬撃を叩き込む。
「銃だけ使うなんて誰も言ってねーだろ?」
俺、どや顔である。
レインの方も圧勝のようだ。
適当な魔法を飛ばして数を減らし、飛びかかってくる敵にはカウンターをかます。俺とほぼ同じ戦法だ。
「“凍る氷(パゴノ・パゴス)”!」
そのカウンターに使う魔法がこれ。至近距離に効果を発揮する魔法だ。
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