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これをくらったラヴァウルフはキャイン! と犬のように情けない悲鳴をあげて地面を転がる。そしてむせたように咳を繰り返す。 魔法の効果で口の中やらのどが凍り付いているのだ。中には牙がボロボロに折れている個体までいる。そこに更に魔法を叩き込んで戦闘不能に追いやるレイン。我が妹ながらえげつないことこの上ない。
ものの1分でラヴァウルフは全滅した。
「お疲れ、レイン」
「うん、お疲れお兄ちゃん」
戦闘を終えた頃になると俺達の周りに村中の人間が集まっていた。
目立ちすぎたな……。
「すげぇ! あれだけいた魔物を全部倒したぞ!」
「やっぱ有名なだけあるな」
「退治してくれたのね! ありがとう!」
魔物退治を終えた俺達を待っていたのは村人達からの感謝やお褒めの言葉。口々に言われると照れる。夜中に騒いで迷惑になるかと思ったがそうでもなかったようで安心した。
残しておいた2匹のラヴァウルフを鎖で縛って、俺達兄妹はルドルフさん宅の納屋へ移動する。
「おかえり、2人とも。やはり勇者は強いな」
納屋の前にルドルフさんが立っていた。先程の戦闘で起こしてしまったのだろう。
「起こしてしまってすみません」
「いやいや。良いものを観ることができた。兄妹勇者の魔物退治をね。さあ、その魔物を納屋に閉じ込めよう」
少し欠けた月の下、ラヴァウルフは納屋に放り込まれた。こいつらが次に外に出たとき浴びるのは月ではなく日の光だ。
「……これが兄妹勇者の実力か。噂通りの強者だな」
ルドルフさんのこの呟きが俺達の耳に届くことはなかった。
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