4人が本棚に入れています
本棚に追加
次々に倒れるラヴァウルフ達。これはもはや戦闘ではない。ラヴァウルフなど、俺達兄妹からすればただの“的”だ。
第一、狼型の魔物は一般的に群れを成さないという事実がありながらラヴァウルフが集団で行動する理由は、個々の戦闘能力が低いからだ。要するに、1体1体が弱いのだ。
「レイン、いくら敵がザコでも油断するなよ。地の利はあっちにあるし、何より数が多い」
「言われなくても分かってるよ、スコールにぃ!」
ここは湿地帯。ぬかるんで転んでしまったら大きな隙になる。ラヴァウルフは慣れているだろうが俺達にいつも通りの動きは難しい。
「弾切れか。再装填(リロード)!」
「りょーかい!」
空になった弾倉(マガジン)を捨て、腰に取り付けてあるポーチから取り出した新しいマガジンを装填する。両手に銃を持っているからマガジンは各々の手の中指と薬指の間に挟んで片方ずつ装填する形になる。やりづらいが慣れれば2秒程でリロードできる。ただしその間は無防備なので毎回レインに援護を頼んでいる。リロード! というかけ声はその合図だ。
「“爆散する雷(エクリクスィ・ケラヴノス)”!!」
広範囲に渡る雷撃。少数ながらそれを浴びせられながらも死を免れるラヴァウルフがいた。俺はひるむ敵にすかさずダートファルコンを連射する。
今ので敵の数は半分くらいまで減ったな。
湿気を含んだ空気が血生臭くなってきた。言わずもがな、ラヴァウルフの血液によるものだ。
俺は敵の中に比較的大きい個体を視認した。コイツが親玉だろう、と考え銃を向けたその瞬間。その個体が遠吠えを発した。
響く遠吠えに共鳴するように他の個体も遠吠える。
「あ? 何だ!?」
「敵の動きが俊敏になってる! 気を付けて!」
これは親玉ラヴァウルフの仕業か。これ以上厄介を増やされる前に処理しておこうか。
ラヴァウルフ達の猛攻の中、俺は親玉に狙いを定める。向こうも俺を標的にしたのか突進してきた。
「レイン、援護してくれ!」
「りょーかい!」
親玉に集中したくて周りの敵はレインに任せることにした。
残弾数が気になる。リロードを終えて弾薬が満タンになったところで俺は再び親玉にダートファルコンを向けて引き金を引く。
乾いた銃声が連続するが親玉ラヴァウルフは倒れない。他のラヴァウルフが盾にでもなるかのように親玉をかばうのだ。
最初のコメントを投稿しよう!