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視界の端に俺に飛びかかるラヴァウルフがうつる。俺はそれを気にとめずに親玉に向かって鉛の弾丸をバラまき続ける。
何故なら──。
「“風の狙撃手(アネモス・スコペフティス)”」
最高に信頼できる妹が俺を援護してくれているのだから。
風の弾丸に貫かれたラヴァウルフは断末魔も無く息絶えたようだ。
直後に親玉が俺に向かって飛びかかってきた。間一髪身を翻して(ヒルガエシテ)避ける。
よくよく見ると親玉は数発の弾丸を食らっていたがいずれも致命傷には至らず、このままではラチがあかない。
「あれ使うか」
ダートファルコンに備えられた特殊な機能を。
体勢を整えて、また親玉ラヴァウルフが俺の喉笛に噛み付こうとダッシュをかける。
俺は右手に握ったダートファルコンで狙いを定め、魔力を集中する。
「砕き散らせ」
通常と異なる射撃音。普通とは違う強烈な閃光。ラヴァウルフの中の1体が親玉の盾になったが、弾丸はその盾ごと親玉ラヴァウルフを貫通した。
これは魔力を、つまり人が魔法を使うための力を纏った弾丸だ。ダートファルコンには魔力で銃弾を強化する特殊機能が備え付けられているのだ。
俺の言葉通り頭蓋骨を砕き散らされた親玉ラヴァウルフは肉塊と化した。ちなみにこの「砕き散らせ」というセリフは俺がこの技を使う時によく言うものだ。理由は何となくかっこいいから。
「親玉撃破!」
「お兄ちゃん、残りを倒すよ! “大きな衝撃(ソク・メガロス)”!」
「了解!」
親玉の死はラヴァウルフ達に少なからずショックを与えたようで、敵の動きに迷いが見える。鈍くなったラヴァウルフが全滅するのにそう時間はかからなかった。
「うがぁああ、疲れた!」
「お疲れ、お兄ちゃん」
戦闘を終えた俺達兄妹。あたりには血の臭いが充満しているが、もう慣れたものだ。慣れてしまったというべきか。初めの頃はこの臭いで嘔吐することも珍しくなかった。
「……にしても、すごい崩れ方してるなこの洞窟」
「ホントだね」
「他人事みたいに言うけどこれやったのお前だよ?」
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