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「にゃあにゃあ。あなた方はあの有名な兄妹勇者、ウェザー兄妹とお見受け致しますが、何故こんな湿地の洞窟に? にゃあ」
この質問には答えて大丈夫だろうか。ラヴァウルフを退治しに来たと言えばそれで終わりだが、それでは洞窟を崩した犯人が俺達であることが想像ついてしまうかも知れない。嘘は良くないが、隠したくなるのは人間の性だろう。
「それより、ユリっていったよな? 妖精がこんな所で何してんだよ?」
俺は嘘以外の方法でこの場を凌ぐ(シノグ)ことにした。話を逸らしまくってやる。
隣でレインが涙目になりながらオロオロしている。
「にゃあ。私がここにいることには何の意味もないんですにゃ。私は妖精。世界のいろいろな場所を見てみたくて放浪してるんですにゃあ。だから私がここにいるのは単なる偶然です。にゃっ」
この、世界を放浪するというのも普通の精霊にはできないことだ。本来精霊は生まれた場所を離れることができないのだから。
旅は妖精として生まれた精霊の特権とも言われている。
「そうか。こんな目に合ったのは不幸だろうけど、旅してて楽しいだろ?」
「にゃあ! 楽しいです! あなた方も旅をしているんですよね。にゃ。私と違って目的のある旅を」
「おうよ。“魔を支配せし王”サタナス・リーパーを倒すための旅だ。応援頼むぜ」
「はい! 応援してますにゃあ! ところでここで何をしていたのですか? にゃあ」
ごまかし切れなかった……。
「お兄ちゃん、もういいよ。正直に話そう」
涙目のまま、レインが俺の袖を掴んだと思ったらそんなことを言い出した。
そうだな、そうしよう。
「にゃ?」
「ごめんねユリちゃん。洞窟が崩れたのはわたし達のせいなの」
「ご、ごめん」
俺達は猫妖精ユリに事情を話し、洞窟の崩落に巻き込んだことを謝罪した。
「にゃ。だから私を助けてくれる時ごめんなさいって言ってたんですね。気にしないでくださいにゃ。魔物の巣になんて普通は誰も入りませんから、誰も気付けるはずがないです。にゃあ」
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