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“魔を支配せし王”サタナス・リーパーを倒すための旅を続ける俺、スコール・ウェザーとその妹、レイン・ウェザーは意外と有名だ。サタナス・リーパーの打倒を目指す者は最近、勇者と呼ばれるようになったが、その勇者のほとんどは歴戦の戦士なのだ。つまり、俺達ウェザー兄妹は勇者の中では最年少。加えて戦い方も勇者の中では珍しい。古株ぞろいの勇者が扱う武器は剣が主。俺が使う拳銃は今まであまり使われていなかったし、妹の使う魔法は近接戦闘を得意とする勇者はあまり使用しないのだ。
勇者らしくない勇者として名を馳せる(ハセル)俺達兄妹は旅の途中でよく人からものを頼まれる。勇者は強くて当たり前だからあの魔物を倒してくれだの、あの街まで護衛をしてくれだの。そんなのが多い。
勇者を頼る者は少なくない。有名な勇者なら頼まれ事は多くなるというわけだ。
要するに──。
「そういえばあんたら、あの有名な兄妹勇者なんだってね? 最近困ったことがあって……助けてくれないかい?」
「いいですけど、困ったことっていうのは?」
「それなんだけどねぇ」
依頼が多くて俺達の旅はなかなか進まないと言いたいのだ。
「金髪に蒼い瞳で2挺拳銃を持っている男と長いクリーミーブラウンの髪に蒼い瞳の女が一緒にいれば、それは兄妹勇者だ」と見た目の話も出回っているようだから行く先々で依頼が待っている。
宿屋のおばちゃんの話に対応する俺とその話に耳を傾ける妹。
ウェザー兄妹の人助けが今日も始まる。
「最近、この村の作物が荒らされることが多いんだよ。なんだか魔物の仕業らしいんだけどね。どこにいる魔物なのか見当がつかないし、そもそも村には魔物退治のできるヤツが少なくて……」
「じゃあ、その魔物を見つけて退治すればいいってことですか?」
「そうなのよ! ごめんねぇ面倒押し付けて」
「いや、かまいませんよ。こういうのも俺達の仕事だと思ってますんで」
「助かるわ。この村は農業で成り立ってるようなものだから、魔物の作物荒らしは死活問題だったのよ。それじゃあお願いするわ」
「了解です」
依頼を聞き終わると、俺はこの国“エクサルファ王国”の騎士団がやる敬礼のポーズをとった。
「うっし、作戦会議だレイン」
「うん! おばちゃん、作物が荒らされるのは夜だよね?」
「そうよ。だから魔物の姿をハッキリ見た人はいないの」
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